願い

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願い

彼が気づいてくれた。 私の左右に揺れるポニーテールに。 林檎みたいな彼の顔を見てわかった。 彼もきっと私が好き。 なんて、あったらいいのに。 そんな人間関係上手くいく訳がない。 少し冷静になったところで言う。 ありがとう。 痛い。 心が。 痛い。 小さい頃お母さんが言っていた。 「お父さんは忙しくて厳しいけれど、すごく素敵な人なのよ。きっとあなたもいつかそんな人に出会った時は、素直にね。」 そう言った、 お母さんのお父さんを想っているような、 そんな、笑顔が輝いていた。 私の目の前には顔を真っ赤にして照れくさそうにしている彼。 好きっと言ったらなんて返してくれるだろう。 驚くかな。 そんなことを考えて。 彼の手を掴み、 「行こ!」 きっとそう言った私の顔は彼より真っ赤だったろう。 いつか実るまで。 この距離が続きますように。
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