1/1
前へ
/80ページ
次へ

クラスに入ると、 案の定僕と彼女は 盛大なる歓声を浴びた。 何よりも驚いていたのは、 彼女の友達だ。 なんで手繋いでるんだよとか、 なんで一緒に来てんのだとか、 そういう色恋沙汰の質問ばかりが飛び交う中で、 彼女が声を上げた。 高く声をあげた。 僕の手を離していく。 離れていく。 友達のあの子に向かって。 彼女は叫んだ。 「ごめんなさい」 もう既に枯らしている声をもっと枯らしながら、 そう叫んだ。 一体が静まり返る。 賑わっていた華やかな舞台は幕を閉じた。 次の瞬間、彼女の友達は笑った。 「もういいよ!」 きっと誰も分からないだろう。 彼女がどんだけ苦しい思いをしてきたか。 そして彼女の友達もまたどれだけ悩んできたのかも。 僕だけが知っている。 みんなが訳が分からないと言った顔をしている中、 僕だけが彼女の事情を知っている。 何だかそんなつまらないものに得意げになっている自分に 少し嫌気がさした。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加