風ニモマケズ

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風ニモマケズ

鼻にかかる冬風が冷たい。 冷たい手に一冊の本を抱き抱えてあの公園に向かう。 彼女には、今日、あの公園に来て欲しいともなんとも言ってない。 でも、なんだか今日、彼女が来てくれる気がして仕方なかった。 歩幅が広がる。 少し曇った空が僕を濁す。 本当に居るだろうか。 なんの確証もない癖に、 突っ走る。 僕の悪い癖。 でもこれでいい。 風が強まる。 どんどん強ばる手には やっとのことで湧き出る力で 持ってる本がある。 彼女を思い出しながら。 彼女がいることだけをただひたすら強く願って走った。
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