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ここまできた
ゆっくりと近づいてくる影に気がつく。
真っ白の中、厚手の茶色のコートを着た彼女であった。
遠くからでもよくわかる彼女の影に少し緊張が走る。
今日言うんだと思えば思うほど、胸が刺されるような痛みを与えてくる。
彼女の本を強く握る。
今にでも壊れそうなくらいのボロボロとしている彼女の本は、まるで僕の心を表しているようで怖くなった。
彼女が近づくにつれ、目が離せなくなる。
彼女は時々止まり、拳をぎゅっと握りしめている。
きっと彼女も僕と同じくらいに緊張していて、不安とかそういうのに押しつぶされそうになっているんだろうなと思う。
僕は覚悟を決めて立ち上がった。
僕よりほんの少し離れている彼女のそばに寄り添うように走る。
彼女がとても驚いた様子で僕を見ていた。
僕は彼女の目の前に来ると、
緊張も不安も怖さとかそういうのを何もかも全部吹っ切ったように言った。
「君が好き」
唇の動きについていけないくらい僕はそう口走っていた。
やっと届きそうだ。
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