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贈り物
走りきった彼が言った。
「君が好き」
彼がそう言った。
好きだとそういったのだ。
ギュッと固く閉めていた口を開ける。
咄嗟にでる。
「わ、私も。」
驚きふためいてしまった声は、あまりにも情けなくて、
胸がいっぱいになる。
手が震えていることが自分の体に伝わっていて、
ドクドクと鼓動する心臓がとてもとても煩わしい。
忽ち彼の顔色が花が咲いたように明るくなる。
例えば、そんな綺麗で明るい花があるように思えるくらい、
素敵な笑顔で私に贈ってくれた。
彼が握りしめた斜陽の本はいつにもなく、綺麗に見えた。
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