club の男

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「加奈子ちゃん、もう飲み物ないじゃん。何か飲む?」 「え――? いいんですか? じゃあ、ミナトくんと同じの!」  隣でキャッキャウフフ、よろしくやっている二人を尻目に、こちらには気まずい空気が流れている。 「あ~……二人って、何の友達なの?」  加奈子の方をチラチラ気にしながら、レイヤが里美に聞いた。 「えっと、職場の後輩なの、加奈子」  里美はなるべく可愛いこぶった声で答えてみる。  っていうか、私もグラス空なんだけど。気づいてるよね? 絶対。 「へ――。いくつなんですか? 里美さん」  急に敬語になったよ。二人とも加奈子と同い年って言ってたもんね。だからって、そんなあからさまな……。 「まぁ、レイヤくんのちょっと上かな~?」  嘘じゃない。「ちょっと」の定義なんて人それぞれじゃない? 6個だって「ちょっと」でしょ。 「ふ――ん。お姉さんですね!」  何そのちょっと境界線引く感じ。こっちだって、アンタみたいな、二流商社に入りたての新人営業マン、お断りなんだけど! 「そんな変わんないよ~。レイヤくん、お酒は結構飲むの?」 「まぁ、普通に飲みますね」 「え~、本当? グラス空じゃん! もっと飲もうよ~」  ちょっと煽る風に言ってみる。  私も空なんですけど、そろそろおごってくれませんかね? 「あ~……」  要領を得ない生返事。  言い方が遠回しすぎたかな? 「私もノド乾いちゃったな~。乾杯しようよ~」  軽くレイヤの腕を掴みながら言ってみる。 ……ふぅ。 レイヤは小さくため息をついてから、作り笑を浮かべながらこう言った。 「お姉さん、おごってくれるんですか~?」  ……はぁぁぁぁあ!?  怒りで口元をひくつかせながら、里美は心の中で叫んだ。 「……何それ~! 私ちょっとトイレ行ってくるね」  とりあえずその場を離れたくて、里美はたいして行きたくもないトイレに向かった。 「トイレにいるから来て! あの二流商社マンまじでない!」  トイレのパウダールームで化粧を直しながら、加奈子にそうLINEを送った。
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