心配したことがない

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心配したことがない

彼女は察しがいい。 勘が鋭いのだろう。 「返信するのも辛いだろうから、 私からはもうLINEしないね。 必要な時は連絡して。 たまに『生きてる?』くらいは 聞くけど。」 そう言って来た。 「ごめんね。」 としか俺は返せなかった。 優し過ぎるのだ彼女は。 心配されているのが痛いほどわかる。 が、彼女は 「私、人の心配なんかしたことない。 自分の心配しかしたことない。」 なんて言う。 俺はいつも 「はいはい。」 とそれを聞き流すが…。 彼女の顔に書いてある。 「心配だ」 と。 だが、彼女には 「他人を心配する」という感覚が どういうものかわからないらしい。 俺と会えないから自分が嫌だ。 自分が寂しいからだ。 俺が苦しんでいるのが自分が嫌だ。 そういう理由らしい。 だから、自分のことしか考えていないのだと 言う。 彼女は自分のことをわかっていない。
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