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目が覚めると私は病室にいた。 さっきまで学校のベランダで一ノ瀬くんと話をしてて、鐘が鳴ったから教室に戻って、それから授業が始まって。後の記憶は途絶えている。口から吐く息が妙に篭って少し息苦しい。私の口元には酸素吸入器が取り付けられていた。 お父さんとお母さんが心配そうに私を見つめていた。 「目が覚めたのね」お母さんは眉間にシワを寄せて、眉は八の字で固まっていた。 重い生理痛で酸素吸入器なんて聞いた事がない。思い当たる節を探すけれど、答えは見つからない。 「私に何が起きてるのか、教えて」 弱々しい私のこの言葉に、お父さんもお母さんも重い口を開いた。 「……何それ? 私、病気だったの? 今まで、それを知らずに生きて来たわけ?」 今すぐにでも掴めるものを投げつけたかったけれど、身体に力が入らず、目に涙を浮かべて歯軋りを鳴らす事しか出来なかった。 「一ノ瀬くんが私に冷たかったのは??」 「私たちが彼にお願いした事なの」 「何で?!」 「お前が大事な一人娘だからだ!」 「そんなの理由になってないよ!」 「あなた止めて! まだ目を覚ましたばかりなのよ?!」お母さんがお父さんを止めた。 「何で好きな人と一緒にいてはダメなの? 私が何をしたっていうわけ?」私は声を震わせて訴えた。 「分かるだろ? 今まで説明しなかったのは、お前が他の子と同じように一度きりしかない人生の瞬間を生きていてほしかったからだ。人を好きになる気持ちを、病気を理由に制限して欲しくなかった。だが、現にお前は授業中に意識を失って、今しばらくは酸素吸入器が必要な状態だ。もう、これ以上お前や一ノ瀬くんを庇いきれないんだ」 「転校は嫌!」とっさに出た言葉だった。 「落ち着いて。今看護師さんを呼ぶから」お母さんがナースコールを押した。 学校には友達も沢山いる。あと一年で卒業なのに、離れるのは嫌。でも、このままだと私はまともに学生生活を歩めない。 けれど、私1人のために、一ノ瀬くんを遠退けるは不公平だ。 もう、選択肢は残されていなかった。
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