11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
仙道壮一郎との出会いは仕事を通じてだった。
優秀な人だと思った。
私たちは仕事を通じて交流を深め、相手の打ち込むソースコードを眺めて理解しあった。
ソースコードには個性が出る。
無駄な記述を省き、いかに効率よく記述するか。必要となるプロセスをどの順番に記述していくか。運用するシステムにどのようにしてデータを送るかによって、メモリーへの負担を軽減させることができるし、タイムラグの少ない、プログラムが完成する。
ちょっとしたプロジェクトが大成功に終わったとき、私たちは夕食をともにした。
そしてその時、彼から指輪を渡され、プロポーズを受けた。
「君の記述するプログラムに惚れたんだ」
彼もなかなかの変わり者だった。
身体の交わりは、人間が所詮動物にすぎないことを再認識させる。いくら進化をして知識を蓄えたとしても人は変われない。人は人として人らしく生きていくしかないのだ。
そして仙道壮一郎は三沢壮一郎になった。「プロポーズをしたのが僕の方だから僕が名字を変えるのが筋だ」とか言っていた。私としては別にどちらでもよかったのだが、あちらこちらに名字変更の手続きをしないで済むことだけはありがたかった。
子どもは作らない。お互いの仕事を尊重する。家事は手の空いた方がする。そんなルールを決めて私たちは結婚生活を始めた。
結婚した以上、隠し事をするのは良くないと思い、私は独自に研究を続けていたAI構想を壮一郎に見せた。
壮一郎は相当驚いていたが、自分もAI開発に携われると理解した瞬間、大喜びだった。
最初のコメントを投稿しよう!