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愛されたい男
「ずっと前から好きでした。付き合ってください。」
僕はお辞儀をして手を彼女に差し出した。
「...。ありがとう。よろしくお願いします。」
「彼女の小さい手が僕の手に合わさった。」
僕は思いがけない返事に顔を上げた。
「ほんとに?」
彼女は
「うん。」と小花が咲いたような可愛らしい笑顔で微笑んだ。
あれから1年経つが、僕の気持ちが冷めることなどありえない。僕は彼女のことが今も大好きだ。
***
僕は「寝る前に飲むとよく眠れるから」と言って彼女がくれたサプリメントを飲んでベッドに横になった。
彼女と愛し合ったベッドで眠りにつこうとしていたが、彼女の温もりを思い出し寝付けずにいた。
ピロピロピロ
スマホが鳴った。
メールかと思い開けたがネットニュースだった。
僕は、なんとなくネットニュースを開けた。
【 速報 】
今日未明、世田谷区のマンションに住む女性が血を流して倒れているのが発見されました。死因は出血死で、犯人はまだ捕まっていない模様。別の複数の殺人事件と手口が似ていることから、同一人物の犯行ではないかと捜査中。
「僕の彼女は、死んだ。」
悲しくて悲しくて、彼女のことを思い出しては恋しくなり涙した。気づいたら、彼女のことを考えている自分がいる。
彼女が死ぬ3日前の夜、
僕は、急に彼女に会いたくなって、彼女の家まで会いに行って部屋に泊まった。
その翌朝、確か彼女は洗面台で歯磨きを終えて出てきた僕の顔を見るなり、なにかよそよそしくて様子がおかしかった。
「僕なにか気に触ることしたかい?なんかあるなら言って欲しい。」
そう聞いてみたけれど、
彼女は、
「ううん。そんなことない。いつも通りだよ。」
そう言って、小さな体で抱きしめてくれた。
彼女の優しい温もりを感じると僕はいつも胸がぎゅっと締め付けられる。
そのあと、彼女は家に飲みものがないからジュースを買いに行くとか言って、出かけようとしたんだけど、僕は彼女の腕を掴んでベッドルームに連れて行ったんだ。
僕は彼女にまたがり、彼女の耳元で囁いた。
「ねぇ、他の男にもこんなことされてるの?」
彼女はぞっとした顔をしていた。
その顔を見て僕は彼女の浮気は、本当なんだと確信したんだ。
でも僕は彼女のことが大好きだし、彼女に愛されることが僕の幸せだから許してあげた。
魔が刺すこともあるさ。変な男に誘惑されたんだろう。その男がいなくなれば君はまた僕に振り向いてくれる。僕が君を好きな気持ちは変わるはずないから、またやり直せばいい。
だから僕は、あの男の手を切り落としてやった。二度と君を触ることができないように。
でもどんなに大好きな君でもあれだけは許せなかったな。
君は警視庁の鑑識で、あの男の殺人事件を自分で極秘に捜査していた。そしてその殺人事件の犯人が僕だと疑っていたね。僕の髪の毛を採取してたのを知っているよ。チャック袋に入った僕の髪の毛や歯ブラシが君のカバンから見えていたからね。君はいつも詰めが甘いから。
鑑識として、君が自らあの男の殺人事件の犯人を僕だと立証しようとしてたり、捜査に協力していたのを知った時はとても辛かったよ。
もし君が僕を愛してくれていたなら、僕をかばうためにあの男の死因結果や事件の証拠を偽装して、未解決事件にしてくれてもいいのになと思ったよ。なのに君は、あの男の味方をするんだね。あの男を殺した罪の裁きを僕に受けさせたかったんだね。あの男を愛しているのかい?
そもそも浮気をしたのは君だよね。裁きを受けるべきは君じゃないのかな。
だからあの日、僕だけのそばにずっといられるように僕は彼女の足を切り落としたんだ。これでもうどこにも行けないよね。
***
彼女が死んだ次の日も、僕は彼女のことをずっと考えて1日が終わった。
僕は寝ようと思い、
彼女がくれたサプリメントを飲み、空の容器をゴミ箱に捨てた。
彼女と愛し合ったベッドに入ると、また彼女の優しい温もりを思い出し、胸がぎゅっと締め付けられたが、僕はそのまま眠りについた。
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