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奇跡は高校1年の文化祭で起きた。 サトルのクラスは綿菓子やタピオカなどのスイーツ屋台を開くことになっていたが、店舗の設営が大幅に遅れていたのだ。 なんとか間に合わせるため設営班は放課後夜遅くまで作業をしていた。やがて一人減り、二人減り、結局最後まで作業をしていたのはこの出し物の発案者であるミサと、特に何でもないサトルであった。 サトルが残った理由は部活もバイトも何もない自由人だったことだけではなかった。これは非モテ属性の男子にとって人生で幾度もないチャンスのひとつだ。しかしチャンスとは単にチャンスであって結果が約束されたものではない。人生で最初の大勝負。これに打って出るかどうか、そこが運命の分かれ道だ。 勇気を振り絞り、崖から飛び降りたサトルは勝利を掴み取った。もはやタピオカ屋などどうでもよかった。 彼女のいる世界といない世界。 今までと同じ住所に暮らし、同じ高校に通っていても、そこはもう違う世界なのである。 あの日あのとき、人生のレールが切り替わったのだ。光の射す方とそうでない方。そうでない方が別に悪いというワケではない。もともと自分がいたのはそっちだ。 しかし、光のレールに乗ってしまった今、この先の人生がまぶしくてしかたがないのだ。
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