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サトルは右肩を跳ね上げて目を覚ました。
プロレスでは、スリーを数え終わらないうちに片方でも肩がマットから持ち上がればセーフなのだ。
が、そんなことはどうでもよかった。
「ここは・・・?」
白いカーテンで仕切られた空間にせまいベッドが置いてある。
サトルが目を覚ましたのはリングの上でも自分の部屋でもなかった。
「病院?」
ぐいっと首を起こして足元を見ると、学生服姿のミサが目を丸くしてこちらを見ている。
そのうしろにはユーレイでもみるような顔をしたオカン、つまりサトルの母親が丸イスに座っていた。
「・・・・」
じわじわと状況がつかめつつあった。
母親はもつれるような足取りで病室を出て行った。父親を呼びに行ったのだ。
ミサは両手で口をおさえ、目には涙が表面張力限界までたまっている。
何か言葉を発せる状態ではなかった。
サトルには聞きたいことが山ほどあったが、何かがのどにつっかえて出てこない。
どのくらい時が止まっていただろうか?
やがて、その何かが口から出てきた。
「おはよう」
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