私のやる気スイッチ

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 カチッ   小さな音が部屋に響く。電気ポットのスイッチを入れる音。  お湯が沸くまでの数秒の間に、カップの上にドリッパーを用意してフィルターを敷く。  100均のドリッパーはなかなか優秀なやつで、かれこれ1年は使っている。  今度は、カトラリーケースからひんやりとしたあいつを探す。    昨年、入社してきた新人君。どこか冷めたカレの目は他人とは一歩距離を置いていて、冷たい印象を与える。  ある日偶然、カレがコーヒー好きなことを知った。  私もコーヒーにはちょっとうるさい。    カレと私が仲良くなるには時間はかからなかった。    今度は、すでに挽いてある豆をコーヒースプーン一杯分入れる。  誕生日にもらった、陶器でできたコーヒースプーン。  カレと一緒で、どこかひんやりと冷たい。でも、その冷たさが心地よかった。  ちゃんと感触が伝わってくるようで。  ここにいるよ、と主張しているようで。  そこへ、沸いたお湯を静かに注ぎ、香りを堪能する。  ゆっくり時間をかけ注がれたコーヒー。  そこへ、ミルクを注ぎ、カフェオレにする。  濃い黒から柔らかな茶色へ変化していくとともに、私の気持ちも仕事モードへと変わる。    カフェオレを一口。  ちょうど良い甘さに、仕事のスイッチが入った。  今日も頑張ろう。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!