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カチッ
小さな音が部屋に響く。電気ポットのスイッチを入れる音。
お湯が沸くまでの数秒の間に、カップの上にドリッパーを用意してフィルターを敷く。
100均のドリッパーはなかなか優秀なやつで、かれこれ1年は使っている。
今度は、カトラリーケースからひんやりとしたあいつを探す。
昨年、入社してきた新人君。どこか冷めたカレの目は他人とは一歩距離を置いていて、冷たい印象を与える。
ある日偶然、カレがコーヒー好きなことを知った。
私もコーヒーにはちょっとうるさい。
カレと私が仲良くなるには時間はかからなかった。
今度は、すでに挽いてある豆をコーヒースプーン一杯分入れる。
誕生日にもらった、陶器でできたコーヒースプーン。
カレと一緒で、どこかひんやりと冷たい。でも、その冷たさが心地よかった。
ちゃんと感触が伝わってくるようで。
ここにいるよ、と主張しているようで。
そこへ、沸いたお湯を静かに注ぎ、香りを堪能する。
ゆっくり時間をかけ注がれたコーヒー。
そこへ、ミルクを注ぎ、カフェオレにする。
濃い黒から柔らかな茶色へ変化していくとともに、私の気持ちも仕事モードへと変わる。
カフェオレを一口。
ちょうど良い甘さに、仕事のスイッチが入った。
今日も頑張ろう。
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