プロローグ

11/16
前へ
/32ページ
次へ
 彼の質問に大きく頷いた女神は、手のひらから一枚の羊皮紙を出す。これはオルダーンの時に一度目を通したことがある。  そう。勇者になるためのである。  何故勇者に契約書が必要なのかはさておき、彼はこの紙切れは罠だと知っていた。敢えて長い文章で契約内容を提示し、読む気をなくさせる。人は長い文章の前に挫折し、契約を結んでしまう。  彼は同じ轍を踏まんとよく目を通す。  有給休暇、給与、ボーナスは一切ない。休日に関しても状況に応じてしか貰えない。さらには勤務中に起きた事故や怪我に対して一切の保険は降りず、全て自己負担となっている。  順に読んで行けばただのブラックな職でしかない。  大勢の為に全てを犠牲にする勇者。聞こえは良いが、大衆のために死んでくれと言っているようなもの。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加