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彼の質問に大きく頷いた女神は、手のひらから一枚の羊皮紙を出す。これはオルダーンの時に一度目を通したことがある。
そう。勇者になるための契約書である。
何故勇者に契約書が必要なのかはさておき、彼はこの紙切れは罠だと知っていた。敢えて長い文章で契約内容を提示し、読む気をなくさせる。人は長い文章の前に挫折し、契約を結んでしまう。
彼は同じ轍を踏まんとよく目を通す。
有給休暇、給与、ボーナスは一切ない。休日に関しても状況に応じてしか貰えない。さらには勤務中に起きた事故や怪我に対して一切の保険は降りず、全て自己負担となっている。
順に読んで行けばただのブラックな職でしかない。
大勢の為に全てを犠牲にする勇者。聞こえは良いが、大衆のために死んでくれと言っているようなもの。
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