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彼は恐る恐る顔を上げた。
「どう、こんな大金を支払え、と?」
「そんなもん村から旅立った勇者が巨大な街で何をする。当然ギルドに入って小遣い稼ぎだろう」
「嫌です! そんな、不条理にもほどがある!」
「いいや! 強引にもなって貰うぞ! だからこそ、私が手伝ってやろうと言っているのだ!」
決め台詞と共に指先をズビシ、と彼に向けて指した。
当然彼は内心で──何が手伝ってやるだ──と思った。顔のないのっぺりとした恐ろしい女神が御付きとは、街にすら入れないだろう。
彼の視線を感じ、首を傾げた。
「うむ。人型か……」
「あの、勝手に話を進めないでください?」
彼の意見も虚しく、彼女は指を鳴らした。
あら不思議。魔法少女のように光が彼女の身体を包み込み、その姿を変えて行く。
光が収まるとそこに立っていたのはウッドエルフの少女であった。
先が尖った耳に黄金の髪の毛の隙間から生えた鹿のような角──誰がどうみてもウッドエルフ。さらに緋色と空色のオッドアイを持ち、緑色のドレスは皺一つない。
これだけ見れば違和感ない。しかし、一点だけを覗いて、だが。
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