プロローグ

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1.  晴れ渡る晴天。穏やかな風。ハミングが聞こえてくる深い森。  若い青年は晴れ晴れした穏やかな世界で、一人絶望しきった顔をしていた。薬草を摘みにいつもの森に来た彼は決して会いたくもない人物に遭い、どう反応していいのか分からなかった。  彼の目の前には女神──と言っても髪の毛は木の枝となり、目や鼻などが一切ないのっぺりとした顔を持つ不気味な女神が立っていた。服と身体が一体化したようにも思えるその容姿は、人からかけ離れている。  そして七本の指を持つ手を彼に向けて差し出しているのだ。 「あの……俺、もう勇者辞めたんですけど。今はフォスって言いまして、オルダーンじゃないです」  そう。彼こそ転生した元勇者オルダーン。  魔王討伐と言う過酷な運命から逃げるように転生し、今まで夢にも見たスローライフを送っていた。微笑ましい日常を破壊するが如く女神は現れ、彼にもう一度勇者になって貰おうとしている。
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