レースの下着

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レースの下着

「先輩って、黒色が似合いそうですね」 「……そう?」  昼休み、のんびりと食事を取っていると、後輩の須田が急にそんなことを言い出す。  僕は世間話だな、と軽く思って、最後に残しておいた冷凍の唐揚げを箸で摘んで口の中に入れた。美味しい。自分で揚げたんじゃないけどね。敦史さん、もう食べ終わったかな。 「それから、先輩と俺って、体格そんなに変わらないですよね?」 「……まぁ、そうじゃないかな」 「下着のサイズって何ですか?」 「ぐふ!」  せっかくの唐揚げを喉に詰めかけた。僕は須田の肩を叩く。 「いきなり何!?」 「あ、すみません……実は、ネット通販で下着を買ったのは良いのですが色を間違えちゃって」  言いながら、須田はピンク色の袋を鞄から取り出して僕にそっと渡してきた。 「新品です。良かったら貰ってください」 「……えっ」  新品でも、後輩から下着を貰うのはちょっと……。  躊躇う僕に、須田が耳打ちしてくる。 「その下着、すっごいエロいデザインなんです」 「な……!」  プレイにどうですか? なんて呑気に須田は笑う。  ば、馬鹿じゃないの!? そんな、はしたないもの、僕が履くわけ……。 *** 「ああ、もう馬鹿……!」  履いてしまった。  後輩から貰った下着を履いてしまった……。  黒いレースで大事な前を覆い、サイドを紐で結ぶデザインの下着……。  ちなみに後ろはほぼ丸見え仕様になっている。あいつ、こんなデザインの履いて彼氏と何をしようとしていたんだ?  ……期待して履いてしまった馬鹿がここにも居るけど。 「空? 横にならないのか?」 「ひえっ!」  いつの間にか寝室に入って来ていた敦史さんが僕の隣に座る。ふたり分の重さでベッドが軋んだ。 「あ、あのですね……」 「うん?」  今、すごい下着を履いているので見て下さい、なんて馬鹿なことは言えない。言いたくない!  だから……自然に誘おう! 自然に……。 「敦史さん、良いにおい……」 「におい? 空と一緒だと思うけどな」  僕が頬を敦史さんの胸にすり寄せると、敦史さんも僕の首筋に顔を埋めてきた。ぺろっとそこを舐めて、服で隠れるところをきゅっと吸われる。 「ん……」 「空は甘いな」 「あの、敦史さん……」  僕は敦史さんのくちびるにキスをしながら、その身体をベッドに倒した。僕が敦史さんの上に乗っかる体勢になる。 「敦史さん、もう準備してあるから……」 「ふふ、今日は積極的だな」  どこか楽しそうな敦史さんに見守られながら、僕は彼の着ているものを全部奪った。  次は、僕が脱ぐ番……。 「敦史さん、僕の脱がせて下さい」 「ん」  身体を起こした敦史さんの手が僕のパジャマに触れた。同時に、僕はちょっと身構える。 「敦史さん、どんな僕を見ても引かない?」 「どんなって? 空はいつだって可愛いよ」  そう言いながら敦史さんは僕を脱がせていく。僕は腰を浮かせる。パジャマの下に、敦史さんの手が伸びて……。 「……おっと」  僕の下着を見た敦史さんの目が丸くなる。  恥ずかしい!  やっぱり、興味本位で履くものじゃないな……っ! 「敦史さん!?」 「これは……すごいな」  手のひらでレースの部分を撫でながら敦史さんが言う。いつもと違う刺激を受けて、僕のそこはぴくりと反応した。 「これを履いて待っていたのか?」 「は、はい……」 「そうか……ここ、冷えそうだから心配だ」 「ん!」  敦史さんの手が、丸見えのそこを撫でる。  滑るように指が入ってきて、僕は小さく悲鳴を上げた。 「確かに柔らかい」 「あ……」 「これを履くのを想像して準備したのか?」 「だ、だって……」 「……今日は、空に動いてもらおうかな」  僕からズボンを脱がして、敦史さんはごろりと横になった。  手を伸ばしてゴムとローションを手に取ると、それを僕に手渡す。 「自分で濡らせるか?」 「……はい」  僕は自分の指にローションを垂らして腰を上げ、それをゆっくりと後ろに入れた。 「あ、っ……」  自分でするところ、見せるなんて滅多にないから興奮する……。  僕は身を屈めて、敦史さんの大きなそれを口に含んだ。  どんどん大きさを増すそれを舐めながら後ろを濡らす。前が苦しく仕方がない。僕は下着を脱ごうと、紐の結び目に手をかけた、が、敦史さんにそれを阻止されてしまう。 「そのままが良い」 「でも……」 「そのままで……そろそろ空の中に入りたいな」 「ん……」  僕はゴムのパッケージを開けて中身を取り出し、敦史さんに被せて……それから。 「あ……っ」  下着をずらして腰を落とし、ゆっくりと敦史さんを中に受け入れる。  大きいの、奥まで来て……良いっ!  ……前も、触って欲しい。 「敦史さん、脱ぎたい……」 「うーん、もったいないな」 「いじわるしないで……」 「それじゃ、片方だけ」  するり、右側の紐が解かれる。  それと同時に敦史さんが腰を動かした。僕は揺さぶられる。 「あ、あっ! いきなり、あ……!」 「空、可愛い」 「う、あ……! や、待って!」 「前もするから、一緒にいこう」  ずっと触って欲しかったところを握られて、僕は喘ぐことしか出来ない。  前も後ろも気持ち良くて、どうにかなっちゃいそう……! 「あ、敦史さん……! キス……」 「ん」  むさぼるようにくちびるを合わす。  激しく身体の熱を混ぜ合いながら、僕たちは快楽に沈んだ。 *** 「へぇ……それで、この下着を?」 「はい……」  僕から洗いざらい事情を聞いた敦史さんはくすっと笑う。 「前にグッズをくれた子だな? 何というか……面白い子だな」 「うう……」 「仲の良い後輩を持つというのは良いことだ」  だが、と敦史さんは僕の額にくちづけながら言う。 「下着を貰うのは今度からは無しだ」 「え? どうしてですか?」 「今度は、俺が選んで空に贈りたい。最高に似合うものをプレゼントしよう」 「……分かりました」 「ふふ。楽しみにしているように」  敦史さん、ちょっと楽しそう。  履くのは恥ずかしいけど、ま、刺激になるなら良いかな……。   「もっと透けているのが良いな」 「も、もう! 敦史さん!」 「嫌か? きっと映えるのに」 「映えは求めてません!」  見つめ合って笑い合う。  それから僕は敦史さんにくっついてそっと目を閉じた。 「おやすみ、空」 「おやすみなさい、敦史さん」  心地良い疲労に包まれて、僕は眠りにつく。  僕が寝た後に敦史さんはさっそくネットでいろんな下着を注文していたということを、後日、僕が知ることになるのは、また別のお話だ。
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