浮気?

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浮気?

「~♪」  最近、空の様子が、おかしい。  よく、スマートフォンの通知が鳴るし、それを確認している空の顔は、とてもとても幸せそうで……ま、まさか……う、浮気……いや、空に限ってそんなことは……最近、ちょっと忙しくて……コミュニケーションが減ったかもしれない……でも……。  ピロン。    ほら、また空のスマートフォンが鳴っている……!  誰なんだ!? 誰からの連絡なんだ……!  ……よし!  俺は空にスマートフォンを渡して様子を見ることにした。 「空、鳴っていたよ」 「あ、ありがとうございます」  特に焦りもしないで、空はそれを受け取るとロックを解除して何やら操作を始めた。その表情は……嬉しそうで……。 「敦史さん?」 「……っ!」  俺がじろじろ見ていたことに気が付いた空が、不思議そうに首を傾げる。俺は適当に誤魔化すことにした。 「いや……休日にメールかな? 仕事なら大変だな、と思って」 「ああ、違いますから大丈夫です」 「そ、そうか……なら、友達かな? 出掛けるなら、気にしなくて良いよ。留守番は任せてくれ」 「それも違うので、大丈夫ですよ」  友達じゃないなら誰なんだ!?  気になって気になって仕方が無い。  こんな馬鹿になっている俺の心中に気が付いているのかいないのか、空はふふっと笑って俺に、スマートフォンの画面を近付けてきた。 「実は、僕、最近……」 「っ……」 「この、スマートフォンで……」 「……」 「宇宙人、飼い始めたんです!」  ……は?  宇宙、え?  今度は俺が首を傾げた。  空は、俺に画面を見せて、そこに映る謎の青い生物の説明を始めた。 「これ、宇宙人を育てるアプリゲームなんです。ご飯をあげたり、日本語を教えたりしてお世話するんですよ」 「……そ、そうか」 「この子は、あっくんっていう名前で……」  あっくんだと!?  やめてくれ。俺の小学校の時の渾名だ。 「宇宙に帰すか、このまま地球で育て続けるか選択できるんです。僕としては、新しい宇宙人も育ててみたいんですけど、あっくんとお別れするのが寂しくて……まだ保留中なんですよ」 「な、なるほど……」  なんだ、ゲームか。  そういえば、昔にそういう携帯ゲームが流行っていたな。歴史は繰り返すというのは本当のようだな……空、疑って悪かった!  俺は目の前の空をぎゅっと抱きしめた。 「あ、敦史さん!?」 「……好きだ」 「え?」 「ずっと、一緒だ」 「は、はい……」  やっぱり、空は世界一の恋人だ。  宇宙人を育てているなんて、可愛い。  空のぬくもりに浸っていると、空が「そうだ!」と明るい声を出す。 「敦史さんも、育ててみませんか? 宇宙人」 「え?」 ***  ピロン。  職場に通知の音が響く。マナーモードにするのを忘れていた。  俺は周りに人が居ないことを確認してから、そっと宇宙人の「そうちゃん」の画面を見つめた。どうやら食事がしたいらしい。時計を見れば、もうすぐ昼休みだ。人間に時間を合わせるなんて、最近のアプリは凄い。  あれから空に勧められるまま、俺はアプリをインストールしてピンク色の宇宙人を飼い始めた。  ……意外とハマってしまって、少し恥ずかしい。けど、空とコミュニケーションを取る材料になっているし、まぁ、良いか。  空の名前から「そうちゃん」と名付けた宇宙人は、ふよふよと画面を漂う。愛嬌があって良いな。空の方が何倍も可愛いが。 「……どうしたんですか。画面見てにやついて……恋人ですか?」 「……っ!」  部下の声で我に返った。  もう昼休みに突入したようだ。 「うるさい。早く飯に行け!」  笑う部下を追い払って、俺はそうちゃんに食事を与えた。それを終えてから、今度は自分の食事に取り掛かる。空が作ってくれた弁当を取り出して、写真を撮ってから箸を取った。  幸せな毎日。  新しいことも取り入れつつ、こんな穏やかな時間を続けていきたいと強く思った。
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