猫の日

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猫の日

 二月二十二日。  猫の日って言うらしい。  猫、猫かぁ……。 「猫耳……」 「空? どうかしたか?」 「あ、いえ、何も」  何か、やりたいなぁ。  でも、猫耳なんて持ってないし。敦史さんが持ってるわけ無いだろうし。  うーん……。 「敦史さん」 「ん?」 「かまってほしい、にゃ」 「……にゃ?」  首を傾げる敦史さん。  僕は、自分の顔に血が集中するのを感じた。  何を馬鹿なことを言っているんだろう。成人男性が「にゃ」とか言っちゃって、痛い人間だ。恥ずかしい。僕はこの場から逃げようと後ろに下がった、が、敦史さんがそうさせまいと僕の腕を掴む。 「ああ、今日は猫の日か」 「えっと、その」 「ふふ、可愛い猫さんだな」  敦史さんは僕を引き寄せて胸の中に閉じ込める。そして、長い指で僕の耳に触れてきた。 「ちょ、敦史さん」 「たくさん、遊ぼうな。俺の猫さん」  最初は僕の耳をくすぐるように触っていた敦史さんだが、だんだん触れ方が……いやらしくなってきた。さらに、指でだけでなく、くちびるを耳たぶにくっつけてきて……。 「敦史さん、そこはもういいから……」 「ん? 猫さんは耳を撫でられるのは嫌いかな?」 「撫でるの範囲を飛び越えてますよ……あっ」 「こんなに熱くしているのに」  敦史さんの息が耳に当たって、その熱が全身に広がる。  いつの間にか敦史さんの手は、僕の胸を撫で回していた。  胸、気持ち良いけど、もっと、違うところも触って欲しい……。  腰が揺れて、無意識に熱くなったものを敦史さんの太ももに当ててしまう。それを敦史さんは咎めることなく、ふっと笑って指でなぞった。 「大人の猫さんはこっちが良いかな?」 「ん、」  僕のズボンと下着をずらして、敦史さんは僕のそこに触れた。湿っている先の方をぐりぐりされると、それだけで足が、がくがくと揺れる。   「敦史さん、いきたい……もっと、いっぱいして下さい……」 「じゃあ、もっといっぱい鳴いてくれるかな?」  鳴く……あ、そっか……。 「気持ち良くして欲しい、にゃ。敦史さんの、奥に欲しいにゃ」 「っ、本当に可愛いな」  敦史さんは、僕から手を離してリビングを飛び出す。すぐに戻ってきたその手にはローションとゴム。 「敦史さん、早く欲しい、にゃ」 「ああ、俺も欲しい」  いつもごはんを食べているテーブルに手をつくように言われたので素直に従う。  バックでするんだ、と思った瞬間に敦史さんが入ってきた。  なんだか、バックって、動物っぽくて興奮する。 「敦史さん、っ……」 「空、痛くないか?」 「大丈夫、にゃ……」  ぐちゃぐちゃと交わる音。  ふたりぶんの荒い息遣い。  飛びそうな意識の中、僕は「猫」という設定を出来るだけ続けた。 「にゃ、にゃ、あっ……ん、んっ! にゃあん……!」 「空、可愛い」 「いっちゃう、にゃああっ!」 「……くっ」  一緒に果てた。  これ、やばい……明るい場所だし、ベッドじゃないし、僕は猫だし……いつもと違うシチュエーションってハマりそう。  呑気にそんなことを考えていたら、ぐいっと腰を引き寄せられた。  あれ? 敦史さんもいったはずなのに、また大きく……? 「敦史さん?」 「もう一回、良いか?」 「うにゃ!?」  僕の首筋にキスを落とす敦史さん。  あはは……敦史さんも気に入ったのかな?  ま、気持ち良かったし、僕も、もう一回したい。  僕は敦史さんの手を取って、その甲をぺろりと舐めた。 「もっと、もっと、愛してにゃ?」  そう言うと敦史さんは微笑む。  僕は振り向いて首を伸ばし、そんな敦史さんのくちびるを甘噛みした。
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