7人が本棚に入れています
本棚に追加
先生が、ふっと鼻で笑うと「それは言葉の綾じゃないか」と訳の分からないことを言う。言葉の綾でも何でもない、先生の本音でしょうに。
「はぁ、その先生、こんなクズにクズって言われるなんて、可哀想ですよ」
「詫びろ、詫びろ、詫びろ、詫びろ、大———」
「ぜーんぜん似てないです」
「え、ちょっと最後までやらせてよ」
私は呆れたように笑うと、先生が溜息を吐いてまた赤ペンで遊びだす。しなやかな動きをするその左手に、私はピアノでもやっていたのかなと、どうでもいいことを考えてしまった。
「いや、でも実際クズなのよ? 俺の言い分も聞いて?」
「先生ってピアノやってたんですか?」
「聞けよ……! やってたよ、ピアノ」
そう言いつつも、ちゃんと答えてくれる先生は優しい。私はぷっと吹き出すと、先生がムッとした顔でまた私の額にデコピンをした。
最初のコメントを投稿しよう!