見えないメッセージ

4/4
前へ
/32ページ
次へ
「そうじゃなくて、もしかしたらこれの送り主は女の子かもしれないの」  首を傾げる2人に、亜紗美から聞いたことを話す。彼らもだんだんと間違いということに納得してきたようだった。 「てことは、千翔(ちか)くんのと間違えられたのかな?」  私は頷く。同じ日に受け取った里見千翔(ちか)くんと間違えられた、と考えるのが妥当だろう。彼は意外にも、よく告白されているようだったから。こういう変わった仕掛けをしないと彼の気を引くのは難しい、と考えた女子がいたとしても、おかしくはなさそうだ。  亜紗美が見た彼女が犯人なら、だが。  しかし、不審な女子が朝に下駄箱にいたということは事実だ。 「千翔って誰?」 「ほら、よく話す、陸上部の師匠」 「ああ!ラブレター破り捨てるやつな!」  私は呆れて2人を見る。たるとはどんな話し方をして、圭貴はどんな覚え方をしているのやら。事実としても、里見くんが少々不憫に思える。 「たると、明日里見くんに渡せる?」 「うーん、部活に来れば」 「え?来ないの?」 「千翔くんよくサボるんだよねぇ」 「たるとの師匠何してるの⋯⋯」  意外ではないといえば、意外ではない。今朝見た彼は、気怠そうな印象だったからだ。  しかしそもそも、たるとからは、とても足が速くすごい人と聞いていた。実際は、能力はあれどそれを持て余しているような人らしい。 「いやー師匠ほんとは何でもできてすごいのに、本気出す時の方が珍しいんだよねー」  それでモテるとはますます疑問だ。ちらりと見える顔の端正さに、皆騙されるのだろうか。 「じゃあ放課後はどこで何してるの?まさか帰宅?」 「たぶんだけど、生徒会室にいると思うんだよね」 「生徒会⋯⋯」  今日は何かと縁がある。 「なんでまたそんなところに」 「ほら、今日も一緒にいたけど、真坂(まさか)くんと仲良いからさ」 「また知らない名前出てきたぁ。俺も朝高(あさこう)がよかったな」  それまで黙って聞いていた圭貴が、口を尖らせている。たるとはごめんごめんと軽く言う。  朝高とは、私たちが通う朝霧高校の略称だ。ちなみに圭貴は、それほど遠くないところにある桜庭高校に通っている。 「てかさ、たると、師匠が部活サボるって散々文句言ってたけど、居場所分かってるんだったら無理やり連れてけばいいじゃん」 「だって、生徒会室は入りづらいじゃん」  今度はたるとが口を尖らせた。私はたるとの気持ちが分かる気がする。しかし、ふと、今日話したクラスメイトのことを思い出す。 「亜紗美と一緒に行くのはどう?」 「だれ⋯⋯」 「それ名案!」  圭貴の声をかき消して、たるとが立ち上がった。そのままガッツポーズを決める。 「よし、明日は生徒会室に乗り込んで、千翔(ちか)くんをぎゃふんと言わせるよ」  彼女は天気に関わらず活動的な子だった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加