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今日は私の誕生日。自分が生まれた日に特別な意味は感じない。しかし彼らは、当人ですら忘れている誕生日を、自分の事のように喜んでくれる。それこそが特別なのだ。
「ありがと」
照れくさくなって小さく笑い返す。
「開けていい?」
「もちろん」
先に開けたのはたるとの方だ。夏らしい黄色い髪飾りが入っていた。
「わ、すごく可愛い」
「最近のあーちゃん、髪結んでること多いからね」
「よく見てるね」
「ずるいぞ、たると。俺は今日めちゃくちゃ久しぶりに会ったのに」
人の髪型など気にするものだろうか、と思って、たるとの揺れるツインテールを見る。さすがにこれが変わったら気づきそうだ。
圭貴が輝く目でこちらを見てくるので、もう1つの包にも手を伸ばす。こちらはブレスレットだった。
「これ、もしかして2人で一緒に選んだの?」
「いや、一緒には行ったけどお互い何買ったかは知らないよ。自分がいいと思ったものをあげたいからって、あえて教え合わなかったの」
「そっかー」
頬が緩むのを感じる。不思議そうな顔の2人の目の前に、2つのプレゼントをかかげて見せる。
「あ、向日葵」
それらはまるでペアで売っているかのように、同じ花が飾りつけられていた。
「さすが双子だね。2人ともありがとう」
双子は少し嬉しそうな顔で、鏡のように顔を見合わせる。私は2つの向日葵を、そっと1つの袋に入れ直した。
それからしばらく3人で色々な話をした。圭貴とはしばらく会っていなかったうえに学校も違うので、話すことは尽きなかった。
「そういえば、さっき誕生日先越されたって言ってたのは?」
「ああそうそう、謎のバースデーカード」
「謎のバースデーカード?」
「あーちゃん、あれまだ持ってる?」
「うん」
私は例の手紙を机の上に出す。
「普通の手紙に見えるけど?」
「うん、そうなんだけどね。⋯⋯」
たるとによると、1ヶ月ほど前から、誕生日の人の元に例の手紙が送られ始めたそうだ。誕生日がその1ヶ月の間だった人でも、貰っていない人はいるらしい。しかし、たるとが知っているだけでも、7人ほどは受け取っているようだった。
噂の詳細は、私も初めて聞いた。
「なんかそれ、特に害はないけど微妙に気になるやつだな。しかも全員じゃないのも気になる」
「そうなんだよねー。何の意味があるのかも分からないし」
双子はそろって顎に手をあてて、うーんと唸る。
「ん?」
亜紗美から聞いた話を言おうとしたとき、圭貴が声を上げた。
「これ、もしかして⋯⋯」
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