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オンライン化の加速は論争を巻き起こした。
いわゆる現実を捨て、全ての情報をオンラインへの移行を希望する人間が現れた。
肉体を否定する人間のグループは、既に生活はオンライン上で行われており全て移行するのが合理的と主張した。
肉体を肯定する人間のグループは、実体を失えば人間と評することはできないと主張した。
(ci:集合的ヒトの記録)
「何を言っている。人付き合いも全てオンラインで行っているんだ。現実で人間に会うなんてすでに何年も前のことだ」
「オンラインにしか存在しないなんて、生物とは呼べない」
「現実では電気1つつけるにもすでに仮想空間が不可欠だ。すでに我々の生活は仮想空間に移行している」
「体を失えば、世界を感じることはできないだろう。人間らしさは生まれないだろう」
「擬似的に再現すればいいじゃないか。優れた媒体への移行は進化だろう。新しい道具をもつのと何が違うんだ」
「それじゃあ人間とデジタルデータは何が違うっていうんだ」
(ci:以上)
【Si:ユフ後の情勢について by NearxsEelE3h】
結論が生まれるとは思えない論争の最中に、厄災が突然降ってきた。
ユフという名の隕石だ。
突然現れ大地を穿ち、微小なウィルスが世界に満ちて猛毒を振り撒いた。
その強力すぎる毒に世界はあっという間に汚染され、人間が生存するために必要な資源が枯渇した。
不毛な議論は打ち切られ、ユフ毒の影響を受けない情報的存在としてオンライン上のみに存在することを選んだヒト種が発生した。
一方の人間はユフの猛毒で次々に倒れ、その数を減らした。
ユフの惨禍は未曾有の危機であり、自然な成り行きでヒトと人間が協力することとなった。低性能な人間の脳のから解き放たれたヒトはより高次元に思考し、人間の生存可能性を模索した。人間は現実世界へのアクセスを捨てたヒトが世界の変化を観測するための有機媒体となった。
その結果、ヒトと人間は相互にユニットを作成し、不可分に助け合う体制が築かれた。
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