今日もまた、生きた人間はいない。

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 12081.08.10 13:55:42  ぽっかりと開けた場所に出た。ここはロボットが頻繁に下草を刈り、落ち葉も掃いている。前方には武骨な作りの入り口がある。地下シェルターへの扉で、鉄製だ。コンクリートを鋼鉄で包む構造になっている。ロボットならば難なく開けられるのだが、人間でも開けることができるよう、自動開閉だ。ただし、今のところロボットしかいない。 「おかえりなさい」  中に入ると、施設の管理AIの音声が迎えた。女性の柔らかな声には、労りがこもっている。  ”嬉しい”。  誰かにおかえりと言ってもらえるのは、いいものだ。 「熊の親子は元気でしたか?」  人間との対話も仕事のうちの管理AIには、ロボットの簡単な感情プログラムと違い、管理AIには複雑なプログラムが組まれている。  人間の感情に寄り添う気遣い、社交辞令、皮肉や冗談も交わせた。 「ただいま。はい。元気でした」  ロボットにも音声機能はついている。感情回路はシンプルで、受け答えのパターンは少ない。  入り口すぐは広いロビー。ロビーを通り抜け、汚染を除去する装置を経由して地下に降りる。現在、除去する汚染はない。稼働している空気清浄機も、既に除去すべき放射線のない現在では、単なる空気の循環機である。  施設にはロボットの他にもたくさんのロボットがいた。穀物や野菜を作るロボット。家畜を世話するロボット。施設の掃除ロボット。医療用ロボット。施設の修理、維持ロボット。警備ロボット。ロボットの修理ロボットもいる。
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