僕はどうしてあんなに怒っていたのだろう

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チッチッチと、僕は舌打ちする。 また母親からのラインだ。 うるさくてしつこくて・・・ だから、僕はすぐに消去する。 今、僕の胸の中では、怒りの炎がメラメラと燃えている。 いつから、僕の心は怒りでいっぱいになってしまったのだろう。 親父に腹が立つ。 威張りくさっている親父に腹が立つ。 僕のことを頭ごなしに怒鳴る 親父が大嫌いだ。 親父の気配を感じるだけで、僕の怒りは爆発しそうだ。 だから、僕はできるだけ家から遠ざかっていようと思った。 そして、今、僕は自分の世界を作った。 誰にも邪魔なんかさせるものか。 僕には、たくさんの友達が入る。 友達といると僕の心は和む。 僕の気持ちをわかってくれる友達の中にいて僕は幸せだ。 ある日、その友達が仲間を連れてきた。 みんな怒りの炎を持っている奴ばかりだった。 僕は、すぐに仲間になった。 僕のアドレスは、いっぱいになった。 1か月前までは、数人のアドレスしか入ってなかったのに・・・。 僕のスマホはなりっぱなし。 僕は、楽しくて有頂天になっていた。 僕は、いつのまにか世界の中心にいた。 僕がいてみんながいるんだ。そう思った。 しかし、ひとつだけわずらわしいことがあった。 母親のラインだ。 「今、どこ? 夕飯はどうする? 今日は父が帰る日だから家にいて」 いつまで父親に遠慮しているんだ。 いつまで僕をいい子にしていたいんだ。 僕は、無性に腹が立った。 「そいつがいるから、帰らないんだろ! ぼけ!」 僕は、チッチッチと舌打ちして、母のラインを消去した。 けれど、胸の中がざわめいた。何かが胸の中で蠢く。 現実の世界がちらりと見えて、僕はまた無性に腹を立てていた。
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