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母と父が迎えに来て、僕はしょんぼりと家に戻った。
母はとても嬉しそうに微笑んでいる。
父は、いつものように苦虫をつぶしたような顔でむっつりとしている。
僕はといえば、話す言葉も思いつかなくて、ただ、足元を見つめたまま歩き続けた。
スマホが恋しかった。
スマホの着メロがとても恋しかった。
みんな今頃何しているんだろう?
みんな僕のこと心配していてくれているだろうか?
母が、スマホを僕の手に渡した。
「こわれちゃってるけど、あなたの宝物でしょ? 持っていて」
涙が出てきそうだった。
瞬きをして無理に涙を押さえ込んだ。
「携帯はしばらく買わないぞ」と、
父親が僕の頭の上から押さえつけるような口調で言った。
僕の胸の中の怒りが少しだけ目を覚ました。
携帯じゃない! スマホだ! ボケ!
・・・親父、お願いだ。これ以上、僕に嫌な思いを思い出させないでくれ・・・
僕は、もう2度とあの世界には行きたくはないんだ。
僕は、ただ、僕の胸の炎を消したかっただけなんだ。
そう思った時に、僕は何かを知った。
そうなんだ、僕は、悪いことをしたかったわけではなかったんだ。
ただ、寂しかっただけなんだ。
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