♡プロローグ♡

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♡プロローグ♡

 広い舞台。艶を放つグランドピアノと美しい青年に、スポットライトが当たっている。  儚い余韻を残して、青年は鍵盤から指を離した。ホールが割れんばかりの拍手に包まれる。  客席では、ヒカリが彼を見守っている。  青年が立ち上がってマイクを握ると、会場が水を打ったように鎮まった。すらりとした体躯に、シルバー・グレイのタキシードが良く似合う。彼が美しい所作で礼をすると、亜麻色の髪がふわりと揺れた。うっとりするような甘い容貌に、そこかしこから堪え切れないように溜め息が漏れる。  青年は、濡れたように艶やかな唇から柔らかな美声を発した。  「次の曲は、僕が愛するただひとりの女性(ひと)に捧げます。曲名は『(ヒカリ)』……。聴いてください」  青年は、客席のある一点だけを見つめる。  「イヤぁ!」  「誰なのよ、愛する人って!」  「きいぃっ!」  会場中の女が悲鳴を上げる。  ヒカリだけが、潤んだ瞳で彼を見つめていた。  (なんて素敵なの。私だけのために……)  青年は目を閉じて、鍵盤に伸びやかな指を落とした──。
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