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その動きはまるで、病院で見た介護士さんが体を拭いてくれていた時と同じ。
「賢斗……その拭き方……どうして知ってるの?」
「んん? これ? ふっ、もしさ、蘭がそのまま帰って来たら、俺が拭いてあげようと思ってたから、介護士さんに教えてもらったんだ」
「……っ……私の為……」
「ん? 俺の為。 病院では仕方ないけど、家に帰って来たら、蘭の事は全部俺がしたいって思ってたから。だって、他の人に触らせたくない」
「そんなの……すごく、大変なのに…っ……」
「大変じゃないよ。それが日常になるんだ。色んな事を教えてもらって、蘭と一緒に過ごせるなら、全然大変じゃない」
「賢斗……っ……ありがとっ……」
「ふっ……」
手や腕を拭き、胸とお腹を拭き終わり、洗面台でタオルを洗い、戻って来るとタオルから湯気が出てる。
ホワホワと温かいタオルで、背中を拭き、脚を拭いて、綺麗な面で秘部を拭く。
「はい、終わり。スッキリした?」
「うんっ! ありがと」
「明日はお風呂に入ってみる? 浸かるのはまだ無理かな? シャワーだけにしとこうか」
「うん……」
「じゃあ、寝てていいよ。俺は、軽くシャワーして来る」
浴室に入る音を聞いて、私は1人、泣いていた。
本当に、ここで私を看るつもりだったんだ。
彼の覚悟は、本物だ。
彼の想いを改めて知り、涙が溢れる。
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