零戦

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 夜、飯を食った後、土間へ向かった。  鍋を洗うお袋の背後に立つ。  (かい)? どうしたの。  振り返ったお袋に、一瞬どう言えばいいのかわからなくなり沈黙した。  頭の中の薄っぺらな辞書を捲って言葉を探す。腹の中で二度三度練習してから、俺はようやく口を開いた。 「……花冠(はなかんむり)の作り方を教えてほしい」  お袋は息を飲んだあと、潤んだ目を細めて頷いた。
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