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「そうなのか」
歩きながら呟く。そうか。そうしなければならないなんて知らなかった。
なぜなら、ほとんどいつも、誰もそんな風に俺に接してなどこなかったからだ。
自分がどうしてこういう言動をするのか、なんでこういう顔を見せるのか。そんなこと誰も、俺にもわかるように説明などしてくれない。
だが。
俺が皆と同じようにすることで、言葉が足りないせいで妹達が泣くのなら。これからもそうし続ける理由など、どこにもない。……
周囲の人々が皆立ち止まり、揃って後ろを振り返った。
ああと口を開ける。目を見開く。何本もの人差し指が空を差す。
遥か後方で、夜闇が一条の光と炎に引き裂かれた。背面すべてが熱くなるほどの爆発音が聞こえた。
遅すぎる空襲警報が鳴り響き始めた。人の群れが激しく波打ち、互いを押しのけるように防空壕の方へと殺到していく。
しかし、その全てが、俺にとってはさほど重大な事と思えなかった。
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