ブルーとナイトとゴールドー誕生日篇Kー

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やっぱり春だな。 夕暮れの空がわずかに明るくなってきている。真冬の、沈んだ灰色のすぐに失せてしまう薄闇とは違って、明るい水色の薄暮が長く続くようになった。さっきまで部員で賑やかだった(というか不平不満が噴出していた)グラウンドに一人で立って、空を仰ぐ。もう幾度も聞いた「キャプテンが走り込み過ぎです。俺らついていけません」。今日は、とうとう監督の金ちゃんが割って入った。 「お前ら、進歩が無さ過ぎる。何でいつも水木の基礎トレに文句を言うんだ。こいつがキャプテンになってもう半年以上だろう。いい加減慣れろ。罰として全員校庭五周な。」 ええーっと悲鳴のような(でも野郎達だから限りなく野太い)声が立ち上り、皆それでも金ちゃんの指示には逆らえず、黙々と走って練習を終えた。雰囲気は最悪だった。それが15分前。ゴールドならこんな時、どうするんだろう。あいつも夏以降キャプテンになったもんな。でも、何だかあいつなら、練習しまくるくせに先頭切ってぶうぶう言ってそうな気がする。ちきしょー、まだ走んのかよ、とか。 もう一度空を見上げる。水色が濃くなって、それでも冬に比べれば白っぽい青色になっていた。思わず溜息が漏れた。俺に皆を上手くまとめることなんて、出来るんだろうか。キャプテンになる前はずっと気楽だった。大好きな走ることを、パスを受けながら、ドリブルをしながら、どこまでも続けた。誰もそれで文句なんて言わなかった。筋トレでも走り込みでも、相手は自分だった。昨日までの自分に勝つ、それだけを考えていれば良かった。それが今は全然勝手が違う。キャプテンマークをつけるんだから、当たり前と言われればそうなんだけれど。 「咲夜君。」 グラウンドに似合わない、鈴の鳴るような声が後ろから聞こえてきた。振り向くと、修学旅行で告白されて付き合っている佐々木さんが、小さく手を振った。青南クイーンと呼ばれている彼女が、紺色のブレザーの肩を寒そうに両手でさすっている。 「待っててくれたの?」 「うん。だって今日、」 お誕生日でしょう? ああそうか、そうだったな。17歳の誕生日。そう言えば今朝一番にゴールドに祝われてた。
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