傍観者

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傍観者

 話を始める前に少し説明文を書かせて頂く。  私の名前は薗田麻帆(そのだまほ)。フリーライターではあるが人気のほどはさっぱりで、掛け持ちでアルバイトをしている三十一歳の女である。はっきり言ってしまえば負け組街道をトップグループで爆走している何とも冴えない女だ。  一つお断りしておきたいのだが、ここで書く話は主人公相手にどこぞの御曹司とやらが歯の浮くような愛の台詞を吐き腐り、極甘な恋愛街道を突き進むようなサクセスストーリーではないということだ。よって登場人物が幸せになるとは限らず、その点をまずご理解頂きたい。  そして恋愛をするのは主人公ではなく知人だ。彼女の茶番劇を主人公視点で偏見を交えてどうなっていくのかを記した『観察日記』のようなものだと思って頂ければ分かり易いと思う。対象者の心情は全くといっていいほど入らず、むしろ語り部となる主人公の私情をふんだんに盛り込んだものになるだろう。所詮は『観察日記』、主観まみれなのはどうかお許し頂きたく観察対象者と語り部との関係を軽く説明しておこう。  観察対象者である西山香津(にしやまかづ)は、父の再婚相手の連れ子である。両親は私が八歳の時に離婚、私は母に引き取られて二人三脚で慎ましやかながらもそれなりに幸せに暮らしてきた。  母が亡くなった際、どこで聞きつけたのか父が葬儀にやって来た。事もあろうにかつて母から父を掠め取った再婚相手とその娘と共に。その娘が香津だ、これで『蛙の子は蛙』であることが何となくご理解頂けたと思う。  それをきっかけに彼女とは薄いながらも交流を持つことになり、お陰であれやこれやと振り回されることになるのだが……お互いそうなのかも知れないが、この際それはどうでもいいこととさせて頂きたい。
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