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「きっと妬みとか嫉みとかがずっとあったんじゃない? 御曹司に対して。婚外子が居る時点で複数の女を侍らせてたのは今に始まったことじゃないだろうし、結婚式だ何だで養育費の支払いが滞ったとか? 多分これまでお金の力で黙らせてきたんだと思う」
伊織は一旦話を止めてお酒で喉を潤す。
「ただ私が不思議に思うのは、こういうのって女の第六感が働かないものなのかな? 証拠が掴めなかろうが断固否定を貫かれようが。しかも御曹司と奥様って幼稚園から高校までの同級生だったって話じゃない? 噂話くらいは把握してたと考えるのが自然だと思うのよ」
「そうよね、私だって貴之君が浮気とかしてたら絶対分かる、そこまでじゃなくても女の気配って案外察知できるものよ」
そうなの? 檜山も浮気してたんだ。ってそこに触れるのは止めておこう、男がほぼ浮気をする生き物だというのは永遠の愛よりも信憑性がある。
「奥様って超絶鈍感なのかしら? それとも恋は盲目状態?」
私は伊織の考えを聞いてみたくなった。
「後者の方が近いんじゃないかな? それと奥様は人生の舵取りを放棄したんだと思う。その決断をしたのは奥様自身だろうけど、そうすることで御曹司の愛情を得られると考えたのかも。きっと御曹司に潜む女の影には気付いてたけど、愛してるの言葉を信じて何から何まで言いなりになってた。憶測だけどね」
それは私も同感だ。こう言っては何だけど奥様は元々流されやすい方なんだろうと思う。人様のことを偉そうに言える立場でないのは承知の上だが、まだ二十代とお若かった訳だしその気になれば逃げ出すことだってできたと思う。それを敢えてしなかったのか精神的に疲弊し過ぎていてできなかったのかは不明だが、きっと引き留めるシグナルは出ていたんじゃないかと思う。
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