傍観者

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 そう、今回は歳の近い新進気鋭の女性カメラマンと助手も同行することになっているのでこちらが待っているくらいがちょうどいい。松井は仰木への挨拶もそこそこに私の手を引いて足早に改札口から駅構内に入る。引き摺られるように付いて行く私だったが、階段を登り切って左折した辺りで速度を緩めて手を放してくれた。 「ゴメンね、私あの人受け付けないのよ生理的に」  そういうことか……私は彼女の気持ちが理解できた。確かにあの男はどこかギラギラしていて一緒にいると落ち着かない。常に女を意識して隙あらばいつでも抱ける準備は怠っていなさそうなのだ。 「どう頑張っても苦手な方っていますからね」 「大人としての対応じゃないのは分かってるんだけど」 「そこまでひどい対応じゃなかったと思いますよ。折角入ったんですから売店を色々観ていきましょう」  私の言葉に松井さんは笑顔になってそうねと頷いてくれた。それから駅構内で無事女性写真家と助手さんと合流した私たちは、駅弁を四つ購入して特急列車に乗り込んだ。これはあくまでも月刊誌に掲載する単発企画の取材旅行なのだが、この場にいる全員が歳も近く独身ということもあって割と早く打ち解けられて雰囲気的には旅行気分だ。 「正直気難しい方だったらどうしようかと思ってました。あのコラムちょっとお堅いじゃないですか」  そう言ってくるのは写真家の鳴海(なるみ)さん、彼女は思ったことをズバズバと言ってくるタイプのようだ。私としては決してお堅いものを書いているつもりは無いのだが、きっとあの歴史的小説を取り上げているコラムを書いているからだろう。 「お堅い、ですか?」 「えぇ、そんなにクソ真面目に突っ込み入れなくてもとは思います」
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