傍観者

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 あぁそういうことか……私はその小説を現代感覚で読めばああなるこうなると揚げ足を取ってるのが滑稽に映って面白がってもらえればという狙いだったのだが、そこを楽しんで頂けていないということは単なる私の力量不足だ。 「貴重なご意見ありがとうございます」 「イヤイヤ、それが堅いんだって。でも実際お会いしてみるとふわっとしてて女の子らしいですよね」  そうだろうか? 私はフェミニンな感じではないし女の子らしくもない。まぁ小柄だからそう見えているだけだと思うのだが。 「女の子らしいなんて言われたことが無いですね」 「そお? 薗田さん可愛いと思うけどなぁ」  彼女は私なんかよりも遥かに美しいお顔でとんでもない冗談を吐かしてくれる。助手の相川(あいかわ)さんも困った表情をしておられるのがいたたまれない。 「でも薗田さん顔出しNGは勿体無いと思いますよ」  相川さんの精一杯のおべっか、気を遣わせてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 「デビューする時にそういう話はあったんですよ、でも本人が頑なに『嫌だ』と」 「そりゃそうですよ。こんな顔晒したら折角付いてくださった読者さんにガッカリされてしまいます」  思い出した、確か当時北欧雑貨を集めたお店の取材に行った時に取材人として顔出しにしようという話が出て、それを推したのが松井さんだった。 『どんな人が取材したのかが見えてる方が説得力があると思うのよ』  彼女の案に一瞬そういう空気になったのだが、私は顔出しなんかして石でも投げ付けられたらどうしようと身震いして断固反対させてもらった。雑誌購読年齢層に合わせた二十代女はこんな奴ですなんて晒され、お前みたいなブス女がかわい子ぶってんじゃねぇぞ的な批判に耐えられるほど私のメンタルは強くない。
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