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『私の顔を晒したせいで発行部数が落ち込むなんて事があっても責任は取れませんよ』
私はそれで顔出しを断った。文章力のせいで発行部数が伸びないのであればその責任は百パーセント受けるが、女優でもないのにルックスのせいにされても責任なんて取れない。結果論で仮に整形をしたところで何の意味も無いからだ。
「それで未だに顔出しNG、書籍出版してもサイン会すら出来やしない」
「イヤですよサイン会なんて。私がコミュ障なのはご存知でしょう?」
「コミュ障というより極度の人見知りでしょうが。折角連載持ってそこそこ読者さんも付いてるのに」
松井さんは私を見てため息を吐く、何故か鳴海さんも一緒に。そんな感じで話をしていると、鳴海さんが意外なことを言い出した。
「私たち、“あの”御曹司と奥様にお会いした事があるのよ」
ここでもあの“エセ美談婚”かとは思ったが、そういえば奥様って公の場に出てこられたことが無かったし、由梨もあくまで後輩の友人というだけで顔は知らないと言っていた。
「そういえば亡くなられた時も写真とか一切出なかったわよね」
「あれは事前に御曹司がマスコミに大枚掴ませて口止めしてるのよ、奥様の顔が世に出て他の男が寄り付いたら困るとかいう理由で」
と鳴海さん。彼女元々はタブロイド誌のカメラマンだそうで、ゴシップ情報は今でも耳に入ってくるらしい。
「それはタブロイド誌時代ですか?」
「ううん、辞めてから。ベビー雑誌の物撮りの仕事が入った時だから、結婚報道の半年ちょっと前かな? 取り扱ってたベビー服ブランドの社員さんだったんだけど、彼女海外生活が長かったみたいでちょっとズレてる印象だったわ。庶民派ぶってる割にブルジョワで」
鳴海さんの言葉に相川さんもうんうんと頷いてる。
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