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トイレ掃除に気を取られて本気で忘れていた。ミカは私の性分を知っているので、ため息を吐きつつもこれ以上のことは突っ込んで聞いてこなかった。
「それと由梨さんも何日かはご実家に戻るって」
「そう、明日まではゆっくりできる訳ね。執筆活動がはかどっていいわ」
「まぁあんたにとってはそうかもね。何でもお母様がヘルニアで動けないらしいからいつ戻れるかは分からないって」
ヘルニアかぁ……私も腰椎のヘルニア持ちなのであの辛さはよく分かる。足が痺れて歩くのも困難だし寝返りもまともにうてなくて案外生活に支障をきたすのだ。
「ヘルニアかぁ、ご養生なさった方がいいわよね」
私は他人事のように外の景色を見つめながら独り言を言った。ミカの車で自宅に戻り、忘れないうちにお土産菓子をダイニングテーブルに置く。
「別に食べ切っちゃっていいわよ」
私はハーブティーの準備をしながら言う。
「こんなに食べ切れないわよ、四人分のつもりで買ってるんでしょ?」
「まぁね、まさかいないと思ってなかったから角が立たないように」
ついでに言えばミカにだけはお土産を買ってきてある。何せこのところ嫌な役回りをさせてしまっているのでせめてもの詫びの印だ。私は二人分のハーブティーをテーブルに置き、小さな紙袋に入っているケータイストラップを渡した。彼女は特定のキャラクターが大好きで、旅行に行ったりした時はご当地限定の物を色々買い集めているのだ。微力ながらも彼女のコレクションに協力し、こうしてお土産として渡している。
「ありがとう、大事にするね」
ミカはそれらを使うことは決してしない。買って集めて愛でるだけ、私には皆目理解できないが、人それぞれ満足感が違うのだろう。そういえば檜山も瓶ビールの王冠を集めていて伊織に呆れられていたっけ、とどうでもいい話を思い出してしまった。
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