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「改築の前に掘り起こしたらしいよ、うちの学年のは中庭だったから掘り起こされてないけど。今や担任の赤松先生も校長だよ、月日が経つのは早いよね」
「そうね、ミカは何埋めたか憶えてんの?」
私はそれとなく『タイムカプセル』のことを訊ねてみる。
「何? って皆未来予想を書いた作文でしょ? そんな気はしてたけどあんた覚えてないでしょ?」
「ゴメン全く憶えてない」
私は正直に白状した。この子に隠し事は通用しない、今更だが。この後ミカは記憶にある限りのことを話して聞かせてくれた。ミカが言うには当時担任だった赤松がいきなり提案して強引に未来予想を書かせたそうだ。
まぁ赤松自身が廃校を経験していて『タイムカプセル』が埋め立てられてしまったらしいのだが、それを将来の夢など無かった者からすればてめぇのゴリ押しなど迷惑なだけだ。
赤松はどれだけご立派なご家庭でお育ちになったかは知らないが、不倫された上に片親となった私を蔑視していた。『片親の女にロクなのはいやしねぇ』公然と言われたのだって一度や二度じゃない。
他にも片親の児童は二人いたが、死別だったことで私ほどの差別は受けてこなかった。それでも『片親の奴はがめつくていけない』一度集金袋が消えて無くなった時、死別による母子家庭の男子児童が疑われた。私は幸い風邪で欠席していた日だったので疑惑の目は免れたがそれはもう酷い言い草だった。
結局三日後に見つかったのだが、赤松本人の管理不手際と分かり、男子児童の母親が泣いて抗議したことで問題が明るみに出た。
学校側も事態を“重く”見てその後十年ほど担任は持たせなかったらしいのだが、教頭や校長と言うのは試験さえパスすればなれるもので人格などどうでもいいもののようだ。
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