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ミカはピシャリと言い切って玄関を閉めようとしたが、新垣仁志は事もあろうに腕力でそれを阻止した。例えちびっこくても男なので腕力はそれなりにあるらしい。私は慌てて玄関に駆け寄り、新垣仁志の顔面に殺虫剤を吹っ掛けた。
「うぎゃあーっ!」
新垣仁志が仰け反って手を離した隙にミカが玄関を閉めて鍵をかける。一先ずはホッとしたが、ミカが罰悪そうにゴメンと言ってきた。
「まぁ怪我が無かっただけヨシにしましょ、それよりも野球中継終わったんじゃない?」
「そうだ! 始まっちゃう!」
私たちは慌ててリビングに入ると間に放送されてる五分番組が始まっていた。間に合った……と腰を落ち着けていると私のケータイがブンブンと震えている。この震え方は出版社関係だ、画面をチェックすると檜山からの着信だ。よりにも寄ってこんな時にと泣きたくなるが、大事な仕事の電話の可能性も高いから出ない訳にもいかない。これで酔っ払ってのノロケ話だったら今度会った時絶対締め上げてやる!
「はい」
『いるならさっさと出やがれ、原稿持ってきてやるから今日中に直せ』
「はぁ? 今になってですか?」
『しょうがねぇだろ、お前テレビ見てないのか?』
見てますよ今まさに。あのファンタジー映画をどれだけ待ちわびたことか……って原稿の直しがテレビと一体何の関係があるというのか?
『“エセ美談婚”絡みのせいで今回の原稿が笑いごっちゃなくなってきたんだよ』
「何それ? どういうこと?」
確かに今回は“エセ美談婚”の隠し子絡みの記事にしたのは事実だけど、拉致監禁した訳でもあるまいし。
『あの御曹司隠し子五人の親権を取ったんだよ。どうもそれがきな臭いらしくてこのまま出すと洒落にならん』
「母親から子供取り上げちゃったの? 今更? それ法律上問題あるんじゃないの?」
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