新宿は豪雨と歌いだす

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みんな林檎姫になりたかった つけまつげとウィッグに憧れ 少しかすれた声をして 彼女になりたかった 「あたし」という一人称を わけもなくかっこいいと思っていた 思い詰めることは時に 彼女の前では礼賛の行為となった 自殺志願者・包帯・浴室 (どうぞ・やって) だけどこのままでいたい 甘やかな誘惑 そんな彼女が母親になっても みんな「あたし」をやめなかった 男たちは「あたし」達を怖がって 結婚すらしたいと思えなかった あたしはいい 林檎姫になれるのなら 男たちを従えた 唯一のヒロインになろう 甲冑で身を固め 旗を翻し 男どもの跪く姿を見て笑おう そんな「あたし」達を 私はもう卒業してしまったのかもしれない ありがとう、林檎姫 あなただけが女王だった いい夢を見させてもらいました 姫のはみ出したアイラインを 今日はちょっとだけ真似てみる
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