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「どうも私の灰汁を取って頂き、誠にありがとうございます。これでカレーの味が落ちなくて済みます」
牛肉だ。えらく礼儀正しいし、へりくだっている。そうか、灰汁が抜けた影響か。なんだかおかしくなって笑ってしまった。
「そろそろ火が通った感じがするでゲス。竹串で刺して確認して欲しいでゲス」
「でごわす」
根菜ちんちくりんコンビが何か言い始めた。
「竹串も洗うんだぞ」
「分かってるよ。いちいちうるさいな」
すっと人参に竹串が通った。ごわすも刺せ刺せやかましかったので、確かめてやったら大人しくなった。しかしこれだけ話をしたのは久しぶりだ。喉がひりひりする。
「うむ。ルウを入れる事を許可する」
何様かよく分からない玉ねぎ様にももう慣れた。ポキポキとルウを割り入れる。野菜や肉の色が染み出した汁が茶色に染まっていく。子供の頃にかいだ、懐かしい香りが漂う。食欲をそそる。
「焦げない様に適度にかき混ぜるんだ。そうそう」
米の炊けた音がした。カレーも大分いい感じだ。
「玉ねぎのお陰でいい具合じゃないのか?」
「うむ。お前はなかなかいい腕をしている。あとは味だな」
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