4人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
皮肉のつもりで言ったら普通に褒められたので、面食らった。
いつも買った惣菜をフードパックに入ったまま食っていたから皿も軽くすすぐ。玉ねぎは黙っていた。炊飯器を開けると湯気がたち、
「上手く炊けたよ!」
と米達が騒いだ。一合しかないから大した量じゃないが、一応しゃもじで軽く混ぜてから皿によそう。それからお玉でカレーもよそう。「初めまして」とか「良い白色をしているな」とか言っている。スプーンも洗い、酒もせっかくだからグラスに入れる。でも何か落ち着かない。そうだ、俺はいつもライスが左、カレーが右に来る様にしていた。でもこれじゃ反対だ……これでいい。よし、あとは食うだけだ。
いつもはただ黙って食い始めて、飲んで酔っぱらってで終わりだったが、自分で作ったカレーを目の前にすると、それだけでは勿体ない気がした。手を合わせて、
「いただきます」
と言う。
「召し上がれ」
と返って来た。食い物に返事されるのは実に奇妙だ。スプーンですくい、口に運ぶ。少し感慨深い。
「上手いか?」
「……うん。玉ねぎから良い甘みが出ている」
「そうか」
「ニンニクも食欲をそそる良い香りだ」
「でござるか」
最初のコメントを投稿しよう!