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「じゃがいももほくほくしている」
「でごわすか」
「人参は正直苦手だったけど、自分で作ると食えない事も無いな」
「でゲスか」
「なすは元から好きだ」
「口説いても無駄ざんす」
「牛肉はやっぱり王様だな、入っているだけでワクワクする」
「光栄です」
「米も美味い。カレーだけじゃ味が濃過ぎるからな」
「わーい!」
カチャカチャとスプーンと皿が擦れる音だけが狭く汚い部屋に響く。
「……ふん、まあ俺が作ったからな。当たり前だ」
煮込んでクタクタになった玉ねぎが答える。
「そうだ努、お前が作ったんだ。お前がワシらを美味くしてくれたのだ。ワシらにはそれは出来ん。ありがとう」
「どういたしまして」
「お前はただの空気の通り道じゃない。空っぽじゃない。ワシらがお前になるんだ。きちんとお前には中身が詰まっておる。美味いと言って食ってもらえて、お前の一部になるのが嬉しいのだ」
「……」
「大層な事なんてしなくても考えなくても良い。食って寝て糞して生きていればそれで良い。美味い物を食って美味いと思えれば十分だ」
「……」
「なんだ、また泣いているのか?」
「……玉ねぎ、お前のせいだ」
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