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上品も何も、切って鍋に入れるのに何言ってんだこのなす。声に出すと完全に変質者になるので、さりげなく持ち方を変えてみる。
「こらこら!へたをつまむんじゃありません!全くお下品ざんす!」
もうよく分からない。なすはおたんこなすだ。へたはお前にとってなんなんだ。まあ食えればそれで良い。玉ねぎみたいな事を考えなからかごに入れる。
「ニンニクでござる」
「じゃがいもでごわす」
「にんじんでゲス」
「私の名前は細切れ肉と申します」
さすが牛肉、格調高い。半額シールが貼られているのが玉に瑕だが。一通り揃った。さあ、帰ったら最後の晩餐だ。
キッチンを使うなんていつ以来だ。作ってくれる人なんて勿論いないし、俺が作る事も無かった。でもまず米をとがねば。これくらいは出来る。今日死ぬし一合で十分だろう。シャクシャクと米ぬかを落としていると、
「あはは、転がされて目が回るよ」
と子供のような声が聞こえて来た。米も喋るのか。野菜も喋ってるし今更驚かない。あとは水に浸してしばらく放っておこう。次は変な野菜共だ。
「とりあえずお前らは全部煮込めば良いのか?」
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