序章

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 そんな中で兄の悲鳴が聞こえた。どうやら妹に「妹の萌え」を教えてもらったらしい、分かる。とても可愛いから。  椛の動作は、ひと仕事を終えた社会人がちょっと疲れた感じだった、そのままリビングのテレビをつけていた。  6人用の部屋なので結構広く、窓の方を見て左には、テレビとソファーがあって、反対の右には6人がけのテーブルとイス、に腰掛けながらニュースを見る妹の椛。眼福、眼福。  未だベーコンを炒めている段階で、とりあえず、兄の目玉焼きには3日前に賞味期限が切れていた卵を使うことにした。今日の朝食当番を放棄したツケとして。  部屋の外から時折聞こえる銃声も、さほど珍しくもないので、もはやBGMでしかない。そんな平穏とは程遠い世界で今日もまた平穏を願う。    ・・・  世界的に増え続ける犯罪やテロに警察だけでは処理能力が足りなくなり、1986年、「奉仕者」通称、ミニスターが生まれる。  ミニスターは警察とは大きく異なり、集団ではなく、個で犯罪行為などを取り締まる。しかし警察と違い、現行犯でしか逮捕出来ないこと。  個人の依頼も可能と言う点、それがミニスターは何でも屋と言われる所以とされている。      ・・・  同年同月同日、7:00時。  彼は部屋から出て、この学校では意味を成さない鍵を閉める。  なぜ意味を成さないのか、それは学校の各科の1年で習う「基礎訓練」の中でピッキングがあるからである。 「ひなお兄ちゃん、しん兄さん置いてきて大丈夫かな?」  向きにして東方向にあるエレベーターと階段の方へ歩きながら、椛は緋和に尋ねた。 「まぁ…大丈夫だろ、どうせアレはGだから。鉄拳制裁を食らっても生きてるよ」 「うんまあ、そうだろうけど…その、台所の敵に例えるのやめてほしい…私嫌いだから……」  僕は「ごめん」と謝り、登校する生徒達を二重の意味で見下す。  あぁ…今日も何も変わらない…。
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