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第1章:黎明
平穏とは遠い、このミニスターの世界で最も重要視されるのは、実力ではない。
そんなものは訓練を積めばどうにでもなる、それ以外では何か?
シンプル、約束を守ること。
人として普通のことだが守れるミニスターは決して多くはない。兎にも角にもどの業界でも時間を守るのは大切なのだ、守れない人がいるとするなら彼のような人であろう。
「まあ、そのとおりなんだが…僕はCランクだぞ?時間なんて守ったって実力には変わりがないんだよ」
途中から彼女から目を背け、拗ねたように言い訳をする彼の名は、「秋城 緋和」前はこの学校でも五指に入るほどの実力者だった。
今ではCランク。どちらかと言えば下位のミニスター。
「そんなこと言ったって社会人になれば実力よりも信頼が勝るのよ、少しくらいは真面目にしなさい」
一瞬だが緋和は、何かを言おうとしたが止めた。
見方によっては、うんざりしているのか、項垂れているか。見分けがつかないが反省の弁は持っていたようだった。
「分かった。気をつけるよ」
「分かればいいのよ、分かれば」とリヴェラは腕を組み、それほどあるわけではない、控えめな胸を張って言った。
綺麗な顔立ち、整った目鼻、すらりとした体はか弱く見えてどこか強靭そうな肉体。大人びて幼さの抜けた顔は美少女と言うより美女。
ややつり上がった青い瞳から一瞬で怒りの色は消え去り、ただ普通の少女のように明るく優しい日向のような声をかけて立ち去る。
「それじゃあ、後でね!」
曇った表情を一変させたのは緋和が不機嫌にさせただけのこと。
嵐が過ぎ去った後、静かな静寂に包まれた。
ただひとり、ため息をつきながら出て行った。
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