「遺書」谷崎トルク

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 友子は純粋で優しく思いやりに溢れているが、頭のいい女だった。君を長い間、女の眼差しで見ていた彼女が、君が僕を愛している事実に気づかないはずがない。そして、僕が無意識のうちに君を求めていた事にも気づいていたはずだ。  あのアパートで言い争いをしていた時、君は友子に告白されたんだろう?  君は本心を語って友子を罵った。友子はあの夜、半ば当てつけのような気持ちで僕と寝た。友子は処女だった。そんな尊い体を、貴重な瞬間を、僕に当て擦り、まるで暴力のように投げつけたんだ。馬鹿な僕はそれに気づきもしなかった。友子の必死さは自分への愛情だと思い込んでいた。それを思うだけで今でも僕の心は激しく痛む。  あの日の友子は小さな子どもみたいに泣いていた。僕を好きだと言いながら、本当は君を想っていたのかもしれない。その後も友子は僕を愛していると言い続けた。僕たちは狭いベッドの上でほとんど泣きながら一生を誓い合った。それでも友子は君への気持ちを諦め切れなかったんだろう。事故に遭って意識のない君にキスしたいと思うほど……。
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