「遺書」谷崎トルク

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 僕と友子はずっと友達みたいな恋人同士だった。  今でもそうだ。幼なじみのようにお互いを信頼しあっている。だが、そこに強い情熱や執着はなかった。狂おしい気持ちはなかった。恋では――なかったのだ。  僕と彼女は似ていたのだろう。お互いを兄と妹のように慕っていた。だから惹かれあった。  勘違いしないでくれ。僕たち夫婦が愛しあっていないわけじゃない。二人の間にある愛情は今でも本物だ。本当に、僕は心底、彼女を愛している。これほど愛した女性は世界でただ一人、友子だけだ。  ただ、二人は似ていた。まるで双子のようにそっくりだった。全く同じ精神構造を持っていた。お互いを兄妹のように慕いながら、一方で君に対して憎しみを感じるほどの強い愛情を持っていた。
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