「遺書」谷崎トルク

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 そう、僕も友子も君を心の底から愛していた。そして、そのもどかしい気持ちに答えを見つけられずにいた。同じだったからこそ強く惹かれあったんだ。もし二人の間に君が存在しなければ、僕たちは結婚していなかったかもしれない。僕はそこにとても不思議さを感じるよ。  君がいなければ成り立たない関係。  友子がいる事で成り立たなかった、もう一つの関係。  君は僕を愛していて、そして僕も君を――。  なんて残酷で罪深い恋だったのか……。  僕と君は、寸分の歪みもなく、真っ直ぐ想い合っていた。  けれど、僕と友子と君の関係は、本当は三角形ですらなかった。  これは僕の幻想だろうか。いや、きっと違うはずだ。 『――おまえをこうやって抱きたかったんだ』  君はあの夜、タクシーに乗る僕に向かってそう言った。  僕たちは学生時代、毎日浴びるように酒を飲んでいつも酔っ払っていた。君に抱き上げられた事も一度や二度ではなかった。  君は僕に口づけた事があるだろう?   事故に遭って意識のない君にキスした友子のように。
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