「遺書」谷崎トルク

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 僕が友子に興味を持っているのを知って、君は友子に声を掛けるようになった。学食で一緒に昼食を取るようになり、気がつけば休みの日に三人で出掛ける事も多くなっていた。  僕は友子が好きで友子も僕に興味を持ってくれた。二人の間には静かだけれど親密で、温かいものが流れていた。  けれど、僕たちは二人きりで会う事はほとんどなかった。二人きりだと上手く話ができず、なぜかぎこちなくなってしまう事が多かった。だからいつも君を入れた三人で会っていた。三人だと不思議と会話が続いた。お互いの固まった意識が君の鷹揚さに触れて柔らかくなり、緊張が解けていくようだった。  そう――  あの頃はいつも間に友子を入れて三人で歩いていた。  友子を通して見る君の笑顔が好きだった。君の豪快な笑い声が響く瞬間がたまらなく幸せだったんだ。  君も同じだっただろう?  僕も友子も君を心の底から信頼していた。君の温かく優しい性格――それを隠すような言葉や態度の悪さも、僕たち二人は大好きだった。 「くそったれ! ど畜生!」  君がよく言うこの汚い言葉を、僕も友子も愛していた。友子はよく君の真似をしていたよ。ドチクショウ! とあの腕を振るおかしなポーズと一緒にね。  それでも君と友子はよく喧嘩をした。パンツ丸出しの馬鹿女とか、筋肉馬鹿野郎とか、お互いを罵り合っていた。最初は軽い言い争いだったそれが段々エスカレートして、最後は物の投げ合いになる。僕はいつもそのやり取りを笑いながら見ていた。少しだけ羨ましいなと思いながら……。  春は花見をして酒を飲み、夏は浜辺で酒を飲み、秋は山に登って酒を飲み、冬は炬燵に入って酒を飲んだ。本当によく飲んだと思う。友子は僕よりもずっと酒が強かった。最初に僕が潰れても、君たち二人はずっと楽しそうに飲んでいた。
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